妻は何度か体勢を変えた。
分娩室に到着した直後は仰向けに寝ていて、途中からひざまずく感じになり、今度は横寝に。
そして最終的にまた仰向けになり、上半身はリクライニングベッドで少し起こしている感じになった。
陣痛で発狂しそうな妻にとっては、体勢を変えるだけでも大仕事。
一つの動作でむちゃくちゃ苦しそうな表情を見せ、「痛みで気が狂いそう」と何度も言う妻に、ただただ「頑張れ」「もうちょっとでベビちゃんに会えるから」と言い続けるしかなかった。
【9時30分頃、ついに本格的な出産態勢へ】
ベテラン助産師さんのアドバイスに従い、私は妻の首根っこあたりを持ち上げて頭部を起こした。
さらにその助産師さんは妻に「自分の好きなタイミングで息を止めて、ウンコを踏ん張るようにりきんで」と話す。(←私が通訳)
妻が息を止め、顔を真っ赤にしてりきむたび、助産師さんは「押して押して押して押して!!!(←ドイツ語で)」と言い、りきんでいる妻のモチベーションを高める。
もちろんそのたびに私も妻に「りきんで!りきんで!」と、大きな声で伝えた。
妻のりきみが限界に到達したら休憩。
1~2分くらいの休憩を挟み、再び妻がりきむ。
これが何度も繰り返された。
すると、途中で妻の表情がスっと楽になったような瞬間があった。
それを見た助産師さんが「もうさっきまでの痛みはなくなったでしょ?」と言うと、妻も「うん、もうだいぶなくなったね」と言う。
そこから何回かりきむことを繰り返す。
すると、ついにベビすけの頭が見えだした。
体液で頭髪はぐしゃぐしゃになっている。
息子がすぐそこまで来ている。
これを見た時点で、私は泣きそうだった。
【9時59分、ご対面】
ベビすけの頭部は黒い髪でおおわれていた。
このタイミングで助産師さんは私に「金髪じゃなくて良かったね。きっとあなたの子だわよ」というジョークを言ってきた(笑)
そして9時59分。
妻の最後のいきみと共に、ベビすけの体がヌルっと出てきて、ついに誕生。
妊娠38週と5日。予定日より9日間早かった。
助産師さんが取り上げた瞬間、ベビすけはそれはそれは元気な声で泣き出し、助産師さんは生まれたベビすけを妻の胸元に置いてくれた。
この瞬間、今まで何度も不妊治療で病院に通ったこと、稽留流産で亡くなってしまった子供のこと、毎日泣いていた日々など、この3年間で起こったいろんなことが一気に押し寄せ、アラフォーのオジサンはとんでもなく嗚咽してしまった。
そもそも、40年近い人生で嬉し涙を流したのは、この時が初めてだった。
これだけの感動が、果たして一度でもあっただろうか。
陣痛開始から6時間。
命がけで息子を生んでくれた妻、元気に生まれてきてくれた息子。
2人に心から感謝だった。
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