【不妊治療33カ月と13日その4:へその緒カット】

不妊治療

ベビすけの誕生後、写真や動画をいくつか撮り、それが終わったころ、助産師さんが「へその緒を切るわよ」と教えてくれた。

てっきり妻か助産師さんが切るものだと思っていたが、2人とも私のほうを見ている。

助産師さん「パパとしての最初の仕事よ」

妻「パパよろしく~」

てな具合だ。

私は血が苦手なので一瞬怯んだが、覚悟を決めてハサミを手にした。

へその緒は意外と弾力があり、生のソーセージを切っているかのような感触だった。

【胎盤チェック】

へその緒カットが終わると、助産師さんはへその緒を引っ張りだした。

妻が一瞬痛そうな顔を浮かべたかと思ったら、Lサイズのピザくらいのものがドロっと出てきた。

それは、生で初めて見る胎盤だった。

ベテラン助産師さんは、若手助産師さんに「ここがこうでああで…」と説明していた。

ただでさえドイツ語はそんなに得意じゃないのに、専門用語ばかりで私にはちんぷんかんぷんだった。

【体のサイズ測定】

へその緒カットと胎盤の中身チェックが終わると、次なるイベントはもろもろの測定だ。

妻の胸の上で泣いたり、すやすや寝てたりしていた息子だったが、測定のため助産師さんに持ちあげられ、妻の胸の上から離された途端、ギャン泣きしだした(笑)

やっぱりママの心臓の音が近くで聞こえると安心するのかもしれない。

そんな安らぎの場所から離されたもんだから、不安になっちゃったんだろう。

さて、測定はまず身長から。

膝を曲げたり、動き回ったり…お願いしても赤ちゃんは動きを止めてくれない。

助産師さんが一生懸命、巻き尺で計ってくれた。

その結果、身長は49センチだった。

次は頭のサイズ。

妻のおなかの中にいた頃から、頭部のサイズは大きかった。

検診のたびに、体の大きさはだいたいいつもドイツの平均より少し下だったのに、頭部の大きさだけはドイツの平均をいつも上回っていた(笑)

両親ともに日本人なので無理ありません。

測定の結果は、35センチ。

そして体重は3160グラムだった。

【部屋を移動】

測定が終わると、「今から安静室に移ってもらって、そこで1~2時間過ごした後、入院病棟のほうに行ってもらうね」と助産師さんに言われた。

妻とベビすけは、ベッドのまま移動。

入院用スーツケースや妻の靴、飲み物、汚れた衣類などは、私と助産師さんで手分けして運んだ。

安静室へ入ったのが午前11時頃。

私も妻も、それぞれ家族や親しい友人に報告を入れ、息子の寝顔を見てはとんでもなく幸せな気分に浸っていた。

そんなふうにのんびりしていたのだが、13時を過ぎた頃だった。

昨日、我が家の蛇口と給湯器を修理してくれた会社から、電話がかかってきた。

女性「あなたのところの大家から連絡があって、今度は停電になったんですって?悪いことは重なるものよねぇ(笑)」

私「ほんとその通りですね。」

女性「で、うちの技術者、昨日あなたのところにも行った男性なんだけどさ、彼からさっき連絡があって、一つ予定がキャンセルになったらしいのよね。で、それがちょうどあなたの家の近くらしいのよ。だから14時に停電の原因を調べるために、そっちに行っていいかしら?」

私「もちろんです。ただ、今僕は病院にいるんです。ついさっき、第一子が産まれたんです」

女性「え!!!本当におめでとう!!!」

私「ありがとう!息子と妻から離れるのはつらいけど、でも早く停電を直さないと、数日後に退院する息子と妻に水シャワーを浴びてもらうことになるので(笑)14時であれば問題なく帰宅していると思います」

この機会を逃したら、もしかしたらテヒニカー(技術者)が来るのは、だいぶ先になってしまうかもしれない。

そうなると、停電はしばらく直らない。

妻と息子のそばにまだまだいたかった私だが、停電から復旧するのが最優先。

私は病院を去り、家路についた。

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