※※上は実際の画像です※※
ドイツに戻り、第3回目の人工授精も終わり、私も妻も普段の生活を送っていた。
そして「吉報」は突然訪れた。
【便器脇のゴミ箱】
夕飯後、しばらくすると妻が少しそわそわしてるような気がした。
と、思ったらトイレに行った。
数分が経過。
まだ出てこない。
さらに数分が経過。
まだ出てこない。
“大”だとしても長すぎる。
そうこうするうちに妻がトイレから出てきた。
それから数十分後、今度は自分が尿意でトイレへ。
ふと、便器脇のゴミ箱に目をやると、ゴミ箱の蓋が閉まり切っていないことに気付いた。
ゴミ箱の蓋を上から押さえると何かが引っかかって蓋が閉まらない。
「なんだ?」と思って蓋を開けると、そこには検尿に使うようなプラスチックのコップが。
さらにコップを持ち上げると、尿で調べる妊娠検査の棒と説明書的なものを発見した。
棒には赤い線が2本。
説明書を見ると、線が2本出ている場合は「陽性」だという。
妻がなんとなくそわそわしながらトイレへ行き、大便以上の長さでこもっていた理由は、これだった。
【嬉しさ30%】
この陽性反応を見つけた時の感情は、率直に言って、嬉しさ30%くらい。
あとの70%は「なんかの間違いじゃないのか?」という気持ちだった。
妻と結婚したのはもうずいぶんと前のことだ。
私たちの後に結婚した友人や親族はすぐに子宝に恵まれ、あっという間に「父親」として先を越された。
彼らに対して「おめでとう」と思う自分がいる一方で、悲しみというか妬みというか、なんとも言えない感情が自分を襲ってきていた。
だが少なくとも妻は、私なんかよりも周囲のおめでたをよっぽど喜んでいた。
そんな妻とも比べてしまい、素直に喜べない自分に対して、より一層自己嫌悪に陥るという悪循環が、時々私の中で繰り広げられていた。
そんな私の前にいきなり陽性反応の棒が出現しても到底信じられなかった。
間違いだった場合、これはただのぬか喜びに終わる。
一瞬高いところに持ち上げられ、そこから地面に突き落とされるのだけはどうしても避けたい自分がいた。
【妻に聞いてみる】
トイレを出て、すぐに妻に聞いてみた。
私「ねえ、ゴミ箱に妊娠検査の棒が捨ててあったけど」
妻「え!見ちゃった?」
私「いや、だってゴミ箱の蓋が少し開いてたから、閉めようと思って上から押さえたけど閉まらなくて。で、中を開けたら発見したんだよ」
妻「そっか…。バレたら仕方ないね。本当はもうちょっと内緒にしておこうと思ってたんだけどね」
私「なんで?」
妻「まだこれだけじゃ半信半疑だし、数日後にもう一回検査してそれでも陽性だったら言おうと思ってさ」
ひとまず今回のことで下手に喜んだりすることはやめよう、そして数日後にまた検査しよう、というところでまとまり、この妊娠検査に関する話は終わった。
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